東京地方裁判所 昭和28年(ワ)8048号 判決 1959年6月12日
主文
1、原告と被告村山保平および被告沖山しまに対する関係において原告が、被告村山保平および訴外村山省次郎に対し東京都豊島区雑司ケ谷町七丁目一〇〇〇番の四の宅地七三坪五合四勺の仮換地四九坪一合六勺(別紙位置図表示のとおり)について、昭和二一年一一月三〇日附賃貸人村山乙松、賃借人沖山武躬間の賃貸借契約にもとずく普通建物の所有を目的とし、期間の定のない賃借権と同一内容の使用収益権を有することを確認する。
2、原告の被告沖山武躬に対する請求を却下する。
3、訴訟費用中原告と被告村山保平および被告沖山しまとの間に生じたものは同被告らの平等負担とし、原告と被告沖山武躬との間に生じたものは原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、原告と被告らとの間において原告が被告村山保平および訴外村山省次郎に対し主文第一項の権利を有することを確認する旨及び「訴訟費用は、被告らの負担とする。」旨の判決を求めると申し立て、つぎのとおり請求原因を述べた。
(一) 被告沖山武躬は、昭和二一年一一月三〇日被告村山保平の先代亡村山乙松から、同人所有にかかる東京都豊島区雑司ケ谷町七丁目一〇〇〇番の四の宅地七三坪五合四勺を普通建物の所有を目的とし、期間を定めないで賃借し、その一部のうえに別紙記載(一)の家屋を所有した。
(二) 被告村山保平は、昭和二三年一二月六日右乙松の死亡により訴外村山省次郎とともに遺産相続により右宅地の権利義務を承継し、被告沖山武躬に対し右賃貸借の賃貸人となつた。
(三) 原告は、昭和二四年五月頃被告沖山武躬から右家屋の所有権および敷地の賃借権の譲渡を受け、これについて昭和二五年七月一八日頃賃貸人の承諾を得て、賃料一箇月一坪について二五円毎月末日支払の約定で、昭和二六年一一月分以降の賃料を支払つてきた。
(四) 東京都は、特別都市計画事業として、右宅地を含む附近一帯の土地区画整理を施行し、右宅地について、昭和二七年四月八日所有者被告村山および訴外村山省次郎に対し、仮換地(当時の換地予定地)として右宅地および隣接地の各一部にまたがる四九坪一合六勺(別紙位置図表示のとおり)を指定し、そのうち二六坪八〇につき原告に対し、二二坪三八につき被告武躬に対し使用区分の指定をし、その頃各関係者に対しその旨の通知をした。
(五) 都市計画事業施行者の指定した使用区分にしたがうときは、原告も被告武躬も使用上の不便があつたので、昭和二七年一一月中旬原告、被告武躬及び隣接地九七七番地の一の仮換地のうち四四坪七〇につき使用区分の指定をうけた訴外葉山一夫は協議のすえ、被告武躬は一〇〇〇番地の四の宅地の仮換地全部につき原告の使用を認め、葉山は、使用区分の指定をうけた右四四坪七〇の使用権を被告武躬のために放棄し、被告武躬がこの部分を使用すべき旨約定し、一〇〇〇番地の四の使用権の移動については土地所有者である被告村山及び訴外村山省次郎の承諾をえた。
(六) そこで、原告は、被告村山保平および訴外村山省次郎に対し一〇〇〇番地の四の右仮換地の全部について、従前の宅地について有する賃借権の内容である使用又は収益と同じ使用又は収益をすることができることとなつたのであるが、被告村山は、従前の宅地の賃貸人として原告の右使用収益を忍容すべきであるにもかかわらず、昭和二八年一月以降賃料の受領を拒んで原告が賃借権者たることを争い、被告沖山武躬は、別紙記載(一)の家屋およびその敷地の賃借権の譲渡を否定し、また被告沖山しまは、原告が右賃借権の譲渡をうけた後である昭和二七年一一月一日被告武躬から右賃借権を譲りうけたと称してそれぞれ原告が賃借権者たることを抗争してやまない。
よつて、原告は、被告らとの関係において主文第一項にかかげる権利の存在を確定して、右抗争を断つため、本訴請求に及んだ。
被告ら訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、答弁として「請求原因(一)、(二)及び(四)の事実は認める。同(三)(五)の事実は否認する。昭和二六年一一月以降の賃料の支払は、被告武躬のためになされたものであつて、原告のためになされたものではない。同(六)のうち、原告と被告らとの間において原告主張の如き抗争が続いていることは認めるが、その余の点は否認する。」と述べた。
立証(省略)
(別紙) 東京都豊島区雑司ケ谷町七丁目一〇〇〇番の四の宅地七三坪五合四勺の仮換地四九坪一合六勺の位置図(朱色を施した部分)
<省略>
目録
(一) 東京都豊島区雑司谷七丁目一〇〇〇番地
家屋番号同町一一一四番二
木造瓦葺二階建店舗 一棟
建坪一二坪七合五勺
二階一一坪二合五勺
附属
木造瓦葺平家建居宅一棟
建坪六坪七合五勺
(二) 同所同番地
家屋番号同町二〇番の八
木造モルタル塗瓦葺二階建居宅一棟
建坪二三坪七合五勺
二階二一坪二合五勺
(三) 同所同番地の四
家屋番号同町一〇〇番の五
木造瓦葺二階建居宅一棟
建坪三六坪九合一勺
二階二五坪二合五勺